次世代の無線LAN規格として注目される「Wi-Fi 6E」とは? その仕組みとメリットを解説
◆デジタル化の進展に伴って進化し続けるWi-Fi
Wi-Fiの歴史について振り返ってみましょう。その規格の源流は1997年に始まり、以後、継続して性能向上を果たしてきました。そして現在、主流となっている規格は2019年1月に発表された「Wi-Fi 6」と呼ばれる規格です。正式には「IEEE 802.11ax」という名称で、第1世代の「IEEE 802.11」から数えて第6世代のWi-Fi規格となります。
Wi-Fi 6の最大の特長は、前世代のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)の6.9Gbpsと比べて9.6Gbpsとさらなる通信性能を実現している点にあります。また、Wi-Fi 6は2.4GHz帯と5GHz帯の両方の周波数帯を使うことができるため、導入する環境や使用する電波に応じて切り替えることで、より快適な無線LAN通信を利用することが可能です。
セキュリティも強化されています。セキュリティ規格としてこれまで使われていた「WPA2」が、Wi-Fi6では「WPA3」という規格が採用されています。WPA2までの暗号化技術で露呈した脆弱性に対応し、より強度の高いセキュリティを実現しています。
具体的には、攻撃者が暗号化通信の盗聴によって乗っ取りを行う「KRACKs」という脆弱性の無効化を実現しています。大切な情報を解読されても、SAEハンドシェイクによって瞬時に暗号化することできるようになりました。
また、192ビット暗号化システムであるCNSA(Commercial National Security Algorithm)を実装し、外部からの侵入に対してより堅牢な仕組みになるとともに、度重なるログインに対して、ログインが一定回数失敗すると強制的にブロックすることができるなど、よりセキュリティが強化されています。
◆スループットのさらなる向上を実現する「Wi-Fi 6E」
Wi-Fi 6に対応した機器も数多く登場していますが、現在ではその拡張版である「Wi-Fi 6E」の普及も進み始めています。「Wi-Fi 6E」の「E」は「Extend(拡張)」の意を示します。Wi-Fi 6Eの特長は、2.4GHz帯や5GHz帯に加えて、6GHz帯の電波でも通信が可能なことです。つまり、より広い帯域幅を利用できるため、他の無線LAN機器が利用しない電波帯を利用することで干渉を回避し、スループットの改善を見込めるなど、多くのメリットを得ることができます。
現在では、総務省の情報通信審議会による「6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件」(※1)に関する答申で、Wi-Fi 6Eをはじめとする規格を日本国内で利用できるようにする動きも加速し始めています。また、同規格に対応したノートPCもすでに販売されており、2022年中にはルーターや、Wi-Fi 6E対応の無線LANシステムも登場する見通しです。
このように、これからますます普及の動きが進むWi-Fi 6E。6GHz帯を生かしていくことで、高解像度の動画やVRといった、高速なスループットを必要とするアプリケーションなどへの活用が見込まれます。Wi-Fi 6Eは、より高速で安定した無線LAN通信を実現する規格として、その可能性は今後も広がっていくでしょう。
【出典】
※1 総務省 情報通信審議会:6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban12_02000142.html