無線LANの押さえておくべき初歩的なポイント その1:スループット
当社NTTデータルウィーブはこれまで、お客様のオフィス向けに数万台という単位の無線LAN関連アイテムを販売・導入してまいりました。
無線LANシステム導入の押さえておくべきポイントとして、初歩的な内容をコラムにまとめました。
無線LANシステム導入及び、システム更改時の情報として、ご活用ください。
ポイントその1:スループットについて(今回コラム)
ポイントその2:無線LANのセキュリティ(次回コラム)
>> ネットワークが遅い、不安定などの課題がある方は、当社へお問い合わせください >> |
ポイント その1:スループットについて
1. スループット
Wi-Fiのスループットを下げる要因としては以下があります。
- 「同一AP配下にある端末が増える(端末が増える分だけCSMA/CAにより待ち時間が増えるため全体のスループットが落ちます)」
- 「同一AP配下に多くの端末の距離が遠い(遠距離の端末が通信に時間がかかるため、CSMA/CAにより待ち時間が増えるため全体のスループットが落ちます)」
- 「APと端末の間に壁がある(壁を透過することで電波が弱まって受信感度が悪くなるため、APから見て壁より奥にいる端末が低速となり全体スループットが落ちます)
- 「同一AP配下から同じ距離に古い規格の端末が混ざっている(規格ごとにスループットは異なるものの全体のスループットが落ちる。古い規格の端末は通信速度が遅いため、こちらもCSMA/CAにより待ち時間が増えて全体が遅くなります。)」
※CSMA/CAとは、Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidanceの略称で、無線LANの通信規格のIEEE802.11a、802.11b、802.11g のデータリンク層の通信プロトコルとして採用されている。
1. 搬送波感知(Carrier Sense):通信開始前に一度受信を試み、現在通信をしているホストがいないかどうかを確認するという
2.多重アクセス(Multiple Access):複数のホストが同じ回線を共有し、他社が通信していなければ、通信を開始する
3.衝突回避(Collision Avoidance): 搬送波感知(Carrier Sense)で段階で通信中のホストがあった場合、通信終了と同時に送信を試みると衝突する可能性が高いため、自分が送信を開始する前にランダムな長さの待ち時間をとり、衝突を避ける
では、QA形式でより分かりやすく説明をいたします。
Q1-1:同一AP配下にある端末が増えるとどうなりますか?
➡A1-1:端末が増える分だけCSMA/CAにより待ち時間が増えるため全体のスループットが落ちます
同じエリアに5台のPCがある場合のスループット 端末1が通信後、端末2〜5が順番に通信完了した後、再び端末1が通信可能 |
同じエリアに10台のPCがある場合のスループット 端末1が通信後、端末2〜10が順番に通信完了した後、再び端末1が通信可能 ➡各端末の待ち時間が増加 |
Q1-2:同一AP配下に多くの端末の距離が遠いとどうなりますか?
➡A1-2:遠距離の端末が通信に時間がかかるため、こちらもCSMA/CAにより待ち時間が増えるため全体のスループットが落ちます
レーン1:遠距離の端末がある場合 |
レーン2:遠距離の端末がない場合 |
前の走者が走り終わったら次の走者が走れるという条件であればレーン2の方が早く自分の番がきます。 |
Q1-3:APと端末の間に壁があるとどうなりますか?
➡A1-3:壁を透過することで電波が弱まって(これを減衰と呼びます)受信感度が悪くなるため下記の場合グレーエリアの端末が低速となり全体スループットが落ちます
APと端末の間に壁がある |
※金属や鉄筋コンクリートの分厚い壁などは電波がほぼ透過せず、反射してしまいます ※目安となります。厚さにより減衰値は変わります。 |
Q1-4:同一AP配下から同じ距離に古い規格の端末が混ざっているとどうなるでしょうか?
➡A1-4:規格ごとにスループットは異なるものの全体のスループットが落ちます。古い規格の端末は通信速度が遅いため、こちらもCSMA/CAにより待ち時間が増えて全体が遅くなります。もちろん、それでもWi-Fi 6E端末のほうがWi-Fi 4端末よりはスループットは高いです。
レーン1:Wi-Fi 6EとWi-Fi 4が混ざっている | レーン2:同じ規格のWi-Fi 6Eのみの場合 |
前の走者が走り終わったら次の走者が走れるという条件であれば、レーン2の方が早く自分の番がきます。 |
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Wi-Fiは下位互換性をサポートしているため、APより古い規格の端末も接続可能です(逆も同じ)。 ※AP、端末どちらかの規格が古い場合、接続・通信は可能ですが新しい規格でサポートされた機能は動作しません。 |
2.アクセスポイントの設置
APを天井ではなく卓上に設置すると障害物の影響が大きくなります。壁だけでなく、棚であったり人も障害物になりますので、部屋内のレイアウトや高さを変更したり、人がいる/いないかどうかで電波が届く範囲の影響が大きく変わりそれがトラブルの要因になります。
特に5/6GHzは直進性が高く障害物の影響を受けやすい可能性も高いです。
そのためAPは天井に見えるように設置するのが良いです。
では、QA形式でより分かりやすく説明をいたします。
Q2-1:天井ではなく机にAPを置いていいですか?
➡A2-1:障害物の影響が大きくなります。人も障害物です。そのため電波環境が頻繁に変わりトラブルの要因になり、またトラブル解決にも時間がかかる可能性があります。
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対策1:APを天井表に設置 |
対策2:壁掛けAPを設置※壁掛け専用APは天井設置とは異なる電波の飛び方をする場合があります |
Q2-2:逆に高速化メリットを最大限にするためにAP数を大幅に増やしたい
➡A2-2:2.4GHzを有効にしている場合2.4GHzでチャネル干渉が多発します。5/6GHzもボンディング幅によっては干渉への考慮が必要です。そのため緻密なチューニングやアンテナ選定が必要になります。
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6GHzが追加されることでAPの超高密度設置も可能になるかもしれませんが |
一般的なAPの配置間隔
無線LANの使い方によって異なりますが、一般的なオフィス利用で無線LANをメインに業務を行う前提で、無線LAN利用対象エリアにまんべんなく電波を行き渡らせることを想定した設置イメージとなります。
AP-APの距離 |
天井からの距離 |
電波の到達範囲
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約15mおきに1台。 | 設置の高さは約3m。3mより高い場合は指向性アンテナを利用。天井表面。 | 電波の到達範囲はローミングしやすいよう10%程度重複。 ※電波自動調整で出力調整できる場合は自動的に調整されるはずです。 |
スループットを効果的を最大限引き出す対策はできそうですか。
無線LANの速度を改善したい、無線LANが不安定などの課題がある方は、是非当社へお気軽にお問い合わせください。
ポイントその2では、無線LANのセキュリティについてのコラムを掲載いたします。
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