コラム

無線LANシステム構築の基礎

無線LANは一般家庭でも使用されており、無線LANルーターなども数多く販売されています。一般の家庭用無線LAN機器は、数人程度で利用するものとして製造されているので、SOHOで使うなら十分ですが、数十人が同時にアクセスするような企業などでは実用的ではありません。

企業といっても数十人規模と数百人規模では環境が異なります。今回は使用する規模によって異なる無線LAN環境の構築ポイントを紹介します。


自律型と集中管理型

無線LANのアクセスポイントには、自律型と集中管理型という2つのタイプがあります。

自律型はアクセスポイント単体で動作するもので、機器ごとに各種設定を行います。一般家庭で利用されているものはこのタイプです。法人向け自律型タイプの機器もありますが、導入コストは抑えられるものの、台数が増えると管理が煩雑になってしまいます。小規模な環境下での使用に向いたシステムです。

無線LANのアクセスポイント

一方、集中管理型は、無線LANコントローラーと無線アクセスポイントが分離されていて、管理者が無線LANコントローラーに対して設定を行うと、各アクセスポイントに自動的に設定が反映されます。多くのアクセスポイントを一括で管理しなくてはならない環境では、こちらのタイプが採用されています。

また自律型は、無線LANアンテナ機能、暗号化、複合処理、認証、電波出力調整、ローミングといった、無線LANに関するさまざまな処理をすべて行わなければなりません。

しかし集中管理型なら、高度な処理はコントローラーが担当し、アクセスポイントは無線LANアンテナと受信時の暗号化や複合化処理を担当するなど、切り分けることが可能です。これにより、アクセスポイントのリアルタイム処理が速くなり、安定化と高速化につながります。

自律型と集中管理型

一般向けとは異なる企業向けの製品

無線LANで使用している規格そのものは同じでも、企業向けの製品は、一般家庭用とは異なる仕様のものが多くあります。例えば、同時接続するクライアント数が少ない家庭用では、10台以上が同時通信することは考慮されていません。

しかし企業向けモデルでは、同時接続台数を非常に重要視しており、それぞれの通信を安定して処理できるように設計し、処理能力に優れたパーツを採用するなど、高い安定性を実現しています。

また企業向けアクセスポイントは、オフィスや工場などの天井に設置するケースもあります。その場合、ACアダプターの電源がとれないことも少なくありません。そこでLANケーブルを使って電力を供給するPoE(Power over Ethernet)という技術が使われます。LANケーブルで接続すれば、電源のない場所でもアクセスポイントを設置できるようになります。

さらにアクセスポイントには、アンテナが機器とセットになっている内蔵型機器と、アンテナが外付けの外付け型のモデルが存在します。内蔵モデルはアクセスポイントの設置場所によって、電波環境が決まってしまいます。しかしアンテナが露出していないので、見た目もすっきりと設置できます。一方、外付けの場合は特定方向にアンテナを向けるといったことができ、アンテナの「指向性」または「無指向性」を選択することも可能です。本体を天井裏に設置して、アンテナだけを天井に設置することが可能な製品もあります。

アンテナの指向性と無指向性

このように企業向けのモデルは家庭用製品とは大きく異なっています。企業の中でも小規模な環境であれば、家庭用の無線LAN機器で事足りるケースもありますが、接続台数が増えてくると速度の低下や安定性に問題が生じることもあります。

無計画に複数のアクセスポイントを置いたために、かえって電波干渉を招き通信が安定しないといった事例も少なくありません。規模の拡大に応じて、最適な環境を構築するように検討したいものです。

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