コラム

最新規格の搭載技術をおさえる

現在、無線LANの最新規格はIEEE802.11acで、5GHz帯の周波数を使い、規格上の転送速度は6.9Gbpsにもなります。従来の11nが最大600Mbpsであったのに比べて高速なデータ転送が実現されました。

今後は、企業の無線LAN環境も11acが基準になっていくので、この規格がどのような技術で高速転送を実現しているのかを中心に紹介します。


11acの特徴をおさえる

まず11acの規格は、2013年(策定は2014年)にWave1(第一世代)が登場し、2015年にさらに高速なWave2(第二世代)が登場しています。現在、市場にはWave1の機器とWave2の機器が混在していますが、今後はWave2のものが中心になっていくでしょう。

11acによって高速化されたデータ転送技術は、荷物を運ぶ車と道路によく例えられます。以前は2車線しかなかった道路が4車線になったことで流通量を増やすことができました(帯域幅の拡大)。

以前は小さな車の荷台に荷物を積んでいましたが、今は大きなトラックの荷台に荷物を入れて運ぶ(変調信号の多値化)。今までは同時に配送できなかったものが、4台同時に配送できるようになりました(MIMOの拡張)。こうした高速化の技術を具体的に見てみましょう。

無線LANの最新規格「11ac」の特徴

◯ チャンネルボンディング(帯域幅の拡大)

5GHz帯の周波数は、20MHz刻みで19チャンネルあります。11nではこのチャンネルを2つに束ねて40MHzとして伝送速度を向上させました(2車線にして流通量を増やした)。11acでは80MHzにすることで、さらに高速化しました(4車線にしてさらに流通量を増やした)。規格上は最大160MHz(8車線)まで拡張できます。

チャンネルボンディングについて

◯ 変調信号の多値化

デジタル信号を電波として送る際、一度にどれだけ積載できるかということで、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)という数値で表します。11nが64QAM(6ビット)だったのに対し、11acでは256QAM(8ビット)となり、1回により多くの荷物(通信データ)を運べるようになりました。

◯ MU-MIMO

11nでは無線通信時に送信機と受信機の双方で複数のアンテナを使って通信を高速化するMIMO(Multi-Input Multi-Output)という技術が搭載されていました。しかし、複数のクライアントが一つのアクセスポイントへ同時通信を行う場合は、接続を切り替えて通信していました。そのため、1台あたりの通信速度は低下していました。

MU-MIMO(Multi User MIMO)では、ビームフォーミングという機能を活用することで、同時接続(最大4台)が可能になり、複数クライアントと接続しても通信速度が下がりません。

MU-MIMOについて

今や無線LANに接続するクライアントはPCに限らず、スマートフォンやタブレットなど多様な機器が増えています。古い規格の無線LANで、速度の低下やつながりにくさを感じていたら、無線LAN環境の更新を検討する時期かもしれません。

多くのクライアントが同時接続する法人利用の場合は、複数のアクセスポイントを設置します。そのときにチャンネルボンディングを行うと、チャンネル設計が難しいといったケースもあります。無線LAN環境の更新時には、こうした法人での導入事例に詳しいベンダーへ相談することをお勧めします。

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